承徳の中心部、火神廟の近くに馬市街という通りがあります。道幅はそれほど広くなく、店が立ち並び、人通りも多い場所です。このにぎやかな旧市街の一角に、私がよく通う小さな店「老房子小酒館」があります。

店は小さく、外観もごく普通です。灰色のれんが壁に赤い看板、入口にはいくつかの提灯。凝った内装ではありませんが、清潔に整えられています。この辺りを知らなければ、通りかかっても特に気に留めないかもしれません。

けれど、この小さな店は、もう20年以上も続いています。

ここが好きな一番の理由は、やはり料理がおいしいことです。

承徳の人にとって、とろみをつけたたれで仕上げる伝統料理「熘菜」は身近なものです。肉の薄切りを使う「熘肉片」や「熘三様」は、火加減、たれのとろみ、口に入れたときの味わいが大切です。老房子の料理には土地らしさがあり、しっかりした味で、ご飯にもお酒にもよく合います。

鶏肉とキノコの煮込みも、よく頼む家庭料理です。ほかにも、青唐辛子とピータンの炒め物、小さなマナガツオの煮込み、さまざまな土鍋料理など、試してみたくなる品があります。

ここの四川料理も、印象に残っています。

特に鶏肉と唐辛子を炒めた「辣子鶏」は、かなり本格的です。北方の家庭料理を中心にした小さな店で、四川料理までおいしく作っているのは、うれしい驚きでした。

料理に加え、店主の人柄も、通い続けたくなる理由です。

親しみやすく、温かく迎えてくれて、細かいことにこだわりません。会計の端数をまけてくれたり、飲み物の持ち込みを受け入れてくれたり、持参した食材を調理してくれたり、飲み残したお酒を預かってくれたり。どれも気さくに応じてくれます。友人との話が弾み、帰りが少し遅くなっても、不満そうな様子を見たことがありません。

一つひとつは小さなことですが、居心地のよさにつながっています。飲食店は商売である一方、人との関わりでは、こうしたささやかなことが心地よく感じられるものです。

この何年も、友人と集まるときには、よくこの店を思い浮かべてきました。

3人、5人で料理をいくつか頼み、お酒を飲みながら近況を話す。あるいは、気軽に食事だけをする。どちらにも向いています。値段も手頃で、堅苦しさがなく、特別に構える必要もありません。

ほかの街から来た友人に、承徳らしい料理を食べられる場所を聞かれると、老房子を勧めることもあります。何組か案内しましたが、皆、味を気に入ってくれました。

もちろん、承徳にはおいしい店がたくさんあり、それぞれに得意料理があります。老房子は一番有名な店ではないかもしれませんし、高級料理店でもありません。それでも、実直な料理、安定した味、気さくな店主、気持ちよく食べられる雰囲気という、この店ならではのよさがあります。

街を知るには、名所旧跡だけでなく、路地に隠れた小さな食堂にも目を向けたいと、私はいつも思っています。

街の味は、いちばん目立つ場所にあるとは限りません。

承徳も、この何年かで大きく変わりました。新しい商業施設や飲食店が増え、旧市街も更新を続けています。それでも、老房子のように20年以上営んできた小さな店には、今も自分の居場所があります。

承徳の食のすべてを代表するわけではありませんが、私にとっては、よく知る承徳の味の一つです。

これから時間があれば、普段通っている承徳の小さな店を、少しずつ記録していきたいと思います。順位をつけたり、わざわざ店巡りをしたりするのではなく、自分で食べ、訪れ、残しておきたいと思った場所を書くつもりです。

街で覚えておきたいのは、山河や史跡だけではありません。路地の奥で食べる一食、そして、また来たいと思わせてくれる、なじみの顔もあるのです。